
クルーズ中のスマホは3種類のネットワークに出会います。外洋では船内の携帯電話網につながることがあり、契約中の通信会社がクルーズ向けの料金で請求します。寄港地では現地のネットワーク、国境に近い海域では隣国のネットワークをつかむこともあります。自宅の回線のデータローミングはオフにして、海上では船のWi-Fi、寄港地では旅行用eSIMを使いましょう。
スマホが知らないうちに国をまたぐ旅といえば、クルーズです。眠っている間に船は次の港へ向かい、その途中でスマホはどの国にも属さないネットワークにつながることがあります。海岸沿いを進む区間では、わずか数キロの海を挟んだ国境の向こう側に乗り移ってしまうことも。
だからといって、スマホを家に置いていく必要はありません。旅の場面ごとに、いまどのネットワークにつながっていて、そこで料金を決めているのは誰なのかを知っておけば十分です。このガイドでは3つの場面を順に取り上げ、それぞれで旅行用eSIMが何をするのか、そして請求書で驚かないための設定を紹介します。
| 船の位置 | スマホのつながる先 | 料金を決めるのは |
|---|---|---|
| 外洋(陸から12海里以上) | 衛星で陸とつながる船内の携帯電話網 | 契約中の通信会社。クルーズ・海上向けの料金で請求 |
| 港に接岸中 | その国の現地ネットワーク | 契約中の通信会社のローミング料金、または旅行用eSIM |
| 海岸や国境の近くを航行中 | いちばん電波の強い陸のネットワーク(国境の向こうでも) | そのネットワークが属する国の料金 |
| 船内のどこでも | 船のWi-Fi | クルーズ会社。パッケージごとの料金 |
ここからは1つずつ見ていきます。先に要点だけ言うと、高くつくのは船内のネットワーク、旅行用eSIMが本領を発揮するのは寄港地、そして海岸沿いではネットワーク名から目を離さないことが大切です。
大型のクルーズ船は、独自の携帯電話網を積んでいます。船内に小さな基地局を置き、衛星で陸とつないでいる仕組みです。陸の近くでは止められていて、船が沖に出るとオンになります。Norwegian Cruise Lineは、そのルールをはっきり書いています。
§船内の携帯電話サービスは、公海上(陸から12海里以上離れた海域)でのみご利用いただけます。
このネットワークでいくら払うかを決めるのは、クルーズ会社ではありません。Royal Caribbeanはローミング料金について「ご利用の携帯電話会社が決定します」と説明し、NCLも料金は自宅に届くふだんの携帯電話の請求書に載ると案内しています。つまり出航前に確認すべき相手はクルーズ会社ではなく、自分の通信会社です。聞くべきことはひとつ、自分のプランで船上の1日がいくらになるか、です。
クルーズ用のパスを販売している通信会社もあります。VerizonのCruise Daily Passは1回線につき24時間で20米ドル、船上でサービスを使った日だけ課金されます。Verizonによると、船の携帯電話サービスは港を出て12マイルを過ぎるとオンになります。パスがなければ通信会社の海上料金が適用され、これはふだんのローミング料金とは別物です。たとえばチェコのVodafoneは、船上のネットワークをEU料金ではなくゾーン3の料金で請求しています。
EUのプランでも、ここでは守ってもらえません。欧州委員会は、ローム・ライク・アット・ホームが及ぶのは陸のネットワークまでだと明言しています。
§EUのローミング規則は、地上の移動通信ネットワークにのみ適用されます。
同じページには、こうしたサービスはたいてい高額であること、スマホがその種のネットワークにつながると料金を知らせるSMSが無料で届くはずであること、追加料金が50ユーロか別に設定した上限に達するとモバイルデータが自動で止まることも書かれています。リバークルーズには朗報もあります。川でも湖でも海岸沿いでも、スマホがふつうの陸のネットワークにつながっている限り、EUのローミング枠はそのまま使えます。規則の詳細はEUローミングが本当に終わる場所のガイドで解説しています。
50ユーロで止まるのはデータだけです。船内の携帯電話網でかけた電話、受けた電話は別に請求されます。海上でも連絡がつくようにしたいなら、船の携帯電話網ではなくWi-Fi経由にしましょう。
何もしません。そして、それがありがたいのです。Zwitchyのプランが対応するのは、各プランに載っている国の陸のネットワークです。船内のネットワークはそこに含まれないので、沖に出るとeSIMはただ圏外になります。しかもプランはすべて前払いなので、請求が膨らむこともありません。海上で適用される料金が、高いも安いも含めてそもそも存在しないからです。
気にかけるべきは、自宅の回線のSIMです。データローミングをオフにしておけば船内のネットワークでデータは使いませんが、電話とSMSは送受信できてしまい、通信会社がクルーズ料金で請求する可能性があります。海上で自分の番号が要らないなら、機内モードにしてからWi-Fiだけオンに戻すのがいちばん安全です。番号を生かしておきたいなら、通信会社が対応していればWi-Fi通話で、電話とSMSを船のWi-Fi経由にできます。それがうまくいく条件は海外でSMSの認証コードが届かないときのガイドで説明しています。
海上でデータを使うなら、現実的な選択肢は船のWi-Fiです。大手のクルーズ会社はパッケージで販売していて、たいていは端末ごとに、1日単位か航海全体で料金がかかります。動画には上位のプランが必要なことがあるので、選ぶ前に各パッケージで何ができるかを確認してください。NCLは動画向けにStreaming Voyage Wi-Fiパスを販売していて、Wi-FiはStarlinkと提携していると説明しています。
船が接岸すると船内のネットワークは止まり、スマホはふつうの旅行者と同じように現地のネットワークにつながります。Verizonの規約はこれを一文で言い表しています。港にいるとき、または外国の通信会社がサービスを提供するエリアにいるときは、その国の料金で請求される、と。旅行用eSIMの出番はここです。ただし、寄港する国がプランに入っていることが条件です。
寄港日のデータ使用量はたいてい控えめです。旧市街までの地図、メッセージを何通かと写真を数枚、船に戻るための配車アプリ。観光の1日なら、ほとんどが150MB〜300MBに収まります。考えるべきは容量ではなく対応エリアです。クルーズは1週間で、ふつうの旅の1か月より多くの国を回るからです。
| よくある航路 | 全寄港地をカバーするプラン |
|---|---|
| 地域プランの11島を巡る東カリブ・南カリブ航路 | カリブ海プラン1つ |
| コスメル、ベリーズ、ホンジュラスに寄る西カリブ航路 | メキシコのプランと中米のプランの組み合わせ、または寄港地ごとの国別プラン |
| 地中海:スペイン、フランス、イタリア、ギリシャ、クロアチア、マルタ、モンテネグロ、アルバニア | ヨーロッパプラン1つ |
| トルコ、ジブラルタル、モロッコ、チュニジアに寄る地中海航路 | グローバルプラン、またはヨーロッパプランに追加寄港地ぶんの国別プラン |
| ノルウェーのフィヨルド、アイスランド、バルト海、イギリス諸島 | ヨーロッパプラン1つ |
| アラスカとインサイド・パッセージ | 北米プラン1つ(米国、カナダ、メキシコ) |
購入前に、パンフレットの地域名ではなく寄港地の一覧を全部確認してください。シント・マールテン、アルバ、米領ヴァージン諸島など人気の寄港地のいくつかは、現時点でZwitchyのどのプランにも入っていません。ジブラルタルもヨーロッパプランの対象外です。インストールはすべて自宅のWi-Fiで済ませておきましょう。QRコードの読み込みに通信が必要だと、クルーズターミナルや桟橋で気づいても手遅れです。
ほかの準備を完璧にした人でも引っかかるのがこれです。ネットワークを自動選択にしているスマホは、いちばん良いと判断した電波につながります。国境の近くや狭い海峡のそば、あるいは沖合では、それが隣の国の基地局になることがあります。ビーチやデッキから一歩も動いていなくても、です。
§国境を実際に越えていなくても、スマホが隣国のネットワークにつながることがあります。
自宅の回線のSIMなら、隣国のローミング料金を払うことになります。クルーズは特にこの影響を受けやすい旅です。船は海岸に沿って進み、ほかの国が見える場所に停泊するからです。よく知られているのは次の場所です。
| いる場所 | つながる可能性のあるネットワーク | なぜ問題になるか |
|---|---|---|
| レスボス島とギリシャ東部の島々 | 海峡の向こうのトルコのネットワーク | トルコはEUローミングの対象外。オランダの欧州消費者センターが、レスボス島を訪れる人にまさにこの点を注意喚起しています |
| コルフ島 | コルフ海峡の向こうのアルバニアのネットワーク | アルバニアはEUローミングの対象外。英国の通信会社のヘルプフォーラムには、アルバニア分を請求されたコルフ島の旅行者の苦情が寄せられています |
| 北キプロスとグリーンライン付近 | トルコの通信会社のネットワーク | チェコのVodafoneが既知のリスクとして挙げています |
| サン・マルタンとシント・マールテン | 島のもう半分 | フランス領の北側はEUローミングの対象、オランダ領の南側は対象外。しかも境界は検問のない一般道です |
| 米領ヴァージン諸島のセント・ジョン島とセント・トーマス島 | 英領ヴァージン諸島のネットワーク | Verizonは米領ヴァージン諸島を国内扱いにしています。フェリーですぐの英領ヴァージン諸島は国際扱いです |
| スイスの湖とバーゼル付近のライン川 | スイスのネットワーク | スイスはEUローミングの対象外で、追加料金がかかるプランも多くあります |
公的な注意喚起があるのはレスボス島の例です。オランダの欧州消費者センターの説明は明快で、スマホが自動でトルコのネットワークにつながると、モバイルデータに追加料金がかかります。同センターは、EU外のネットワークをブロックできるか通信会社に問い合わせること、そしてスマホが使うネットワークを自分で選ぶことを勧めています。
コルフ島では、行ってもいない国の請求が届くのが目印です。Skyのヘルプフォーラムのこのスレッドのような投稿は、ギリシャの島から出ていないのにアルバニア分を請求された利用者からのものです。ヴァージン諸島では、アメリカ人にとって逆の形になります。Verizonの国内ローミングFAQは米領ヴァージン諸島を国内エリアに含めているので、セント・ジョン島のスマホは国内扱いのままです。ただしそれも、海峡の向こうの英領ヴァージン諸島の基地局をつかむまでの話です。
旅行用eSIMは、国境で起きることを2つの点で変えます。前払いなので、間違ったネットワークにつながっても請求は発生しません。そして、プランに入っている国でしかつながらないので、結果は選んだプラン次第です。
スマホが間違った国を選び続けるなら、代わりに選んであげれば解決します。調子の悪い回線で自動のネットワーク選択をオフにし、いま実際にいる国のネットワークを選んでください。Zwitchyの各国のページには、その国でプランが使うネットワークが載っています。
Vodafone自身のガイドも、手動でのネットワーク登録は何度か試す必要がある場合があると注意しているので、1分ほど待ってみてください。2つの習慣があれば、これは面倒ではなくなります。ほかの国の近くで接岸や停泊をするときは、アンテナ表示の横のネットワーク名をちらっと見ること。そして次の港に着く前に自動に戻すこと。戻さないと、スマホはもう届かないネットワークを探し続けます。それでもeSIMが圏外のままなら、「圏外」の直し方で残りの手順を確認できます。
使えます。海上では船内の携帯電話網につながることがあり、契約中の通信会社がクルーズ向けの料金で請求します。寄港地では現地のネットワークにつながります。船のWi-Fiは船内のどこでも使え、クルーズ会社が販売しています。
使えません。旅行用eSIMが対応するのはプランに入っている国の陸のネットワークで、船内のネットワークは含まれません。海上では圏外になり、料金が発生することもありません。次の港までは船のWi-Fiでデータを使いましょう。
寄港する国がプランに入っている港だけです。カリブ海プラン、ヨーロッパプラン、グローバルプランなら、たいていの航路をeSIM1枚でカバーできます。ただしシント・マールテンやアルバのように、現時点でZwitchyのどのプランにも入っていない寄港地もあるので、寄港地の一覧は全部確認してください。
海上なら、船内のネットワークにつながらないためのいちばん簡単な方法です。機内モードをオンにしてから、船のインターネット用にWi-Fiだけオンに戻しましょう。寄港地では機内モードをオフにして、eSIMが現地のネットワークにつながれるようにします。
スマホがコルフ海峡の向こうにあるアルバニアのネットワークにつながったためです。アルバニアはEUローミングの対象外なので、自宅の回線のSIMにはそこでローミング料金がかかります。ギリシャのネットワークを手動で選ぶか、自宅の回線のデータローミングをオフにしておけば防げます。
使えるのは、スマホが陸のネットワークにつながっている間だけです。たとえば海岸の近くや川の上などです。衛星でつながる船内のネットワークに切り替わるとEUの規則は適用されなくなり、料金は通信会社が決めます。