
スイスはEUにもEEAにも加盟していないため、EUの「ローム・ライク・アット・ホーム」は適用されません。ヨーロッパの多くのプランでは、国境を越えた瞬間から1日単位の料金やメガバイト単位の従量料金がかかります。旅行用eSIMならその心配はありません。出発前にインストールしておき、1週間なら3〜5GB、動画を観るならそれ以上を目安にしてください。
スイスはヨーロッパのど真ん中にありながら、コンセントの形はほかの国ではまず見かけない独自のもの。さらに財布に響くことに、ローミングのルールまで独自です。EU在住なら、手持ちのプランでフランス、イタリア、ドイツ、オーストリアはほぼ確実に国内と同じ料金で使えますが、スイスもそうとは限りません。バーゼルからドイツ側へ出て戻ってくるだけでも、国境沿いをハイキングしているだけでも、スマホが気づかないうちにスイスの回線へ切り替わることがあります。このガイドでは、EUのローミングルールがなぜスイス国境で止まるのか、ヨーロッパの大手通信会社がスイスで実際にいくら請求するのか、山岳地帯や列車でスイスの電波はどうなのか、一般的な旅行でどれくらいデータを使うのかを解説します。内容はEUとスイスの規制当局の公式ページ、各社の最新料金表と照らし合わせて確認しており、本文中にリンクを載せています。
EUの「ローム・ライク・アット・ホーム」ルールの対象は、EU加盟27か国とアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、そして2026年1月からはモルドバとウクライナです。スイスはこのリストに入っていません。EUにも欧州経済領域(EEA)にも属しておらず、EUとローミング協定を結んだこともないからです。通信会社が自主的にスイスをプランに含めることはでき、実際にそうしている会社もありますが、義務ではありません。
この状況は当面変わりそうにありません。スイスの通信規制当局OFCOMは、EU型のローミングルールを導入するようなEUとの協定は現時点で存在しないとしています。2025年10月には、EUと別途ローミング協定を結ぶよう求める動議について、スイス政府が時期が適切でないとして議会に否決を勧告しました。2026年3月に署名され、まだ批准を待っているEUとスイスの大型条約パッケージも、交通、エネルギー、保健などが対象で、モバイルローミングは含まれていません。
隣のリヒテンシュタインは例外です。通貨はスイスフランですが、EEAの一員なのでEUのローミングルールが適用されます。英国から来る旅行者はまた事情が違い、英国とスイスは2026年に合意した新しい貿易協定に追加料金なしのローミングを盛り込む予定ですが、まだ発効していません。
答えは会社によってまったく違います。スイスをEU諸国と同じ扱いにする会社もあれば、1日単位で課金したり、別料金のオプションを用意したりする会社もあります。以下は各社の料金ページ(Telekomはteltarif.de)をもとに、2026年10月に確認した例です。
| 通信会社 | スイスは対象? | 対象外の場合の料金 |
|---|---|---|
| Deutsche Telekom(ドイツ) | 対象。現行のMagentaMobilとプリペイドプラン | プランの範囲内で利用可 |
| Vodafone(ドイツ) | 対象外 | 1日パスのEasyTravel。使った日ごとに7.99ユーロ、自動で適用。予約すれば7日間21.99ユーロ |
| o2(ドイツ) | 対象外 | 1日パス。500MBで1日4.99ユーロ、自動で適用(2026年6月以降の契約。それ以前の契約は300MBで2.99ユーロ) |
| Orange(フランス) | 対象 | プランのヨーロッパ向けデータ容量を消費 |
| Free(フランス) | Forfait Free 5G+なら対象 | 海外で月35GBまで |
| Movistar(スペイン) | 対象外 | 500MBで1日6.05ユーロ |
| TIM(イタリア) | 対象外 | オプション「Opzione Svizzera」(プリペイド)。5GBと通話500分で月5ユーロ |
| Iliad(イタリア) | 対象外 | オプション「5GB in Svizzera」。5GBで4.99ユーロ、有効期間1か月、自動更新なし |
| KPN(オランダ) | 対象 | EU料金で課金 |
| Odido(オランダ) | Unlimited Plus、Snelst、Premiumのみ | その他のプランはローミング料金。Odidoアプリで確認を |
傾向ははっきりしています。スイスが含まれるプランなら問題なし。含まれない場合、1日パスでも1週間続けばすぐにかさみ、パスがなければメガバイト単位の料金を払うことにもなりかねません。料金は頻繁に変わるので、出発前に契約中の通信会社のローミングページを確認してください。ほかの通信会社や渡航先はヨーロッパ大手通信会社のEU圏外ローミング料金ガイドにまとめています。
スイスの基地局の電波は、隣国のかなり奥まで届きます。ドイツの消費者センターが最近紹介した事例では、スイス国境に近いドイツ側の遊歩道をハイキングしていた年配の夫婦に約110ユーロの料金がかかりました。スマホがスイスの回線につながっていたためです。国境付近でナビアプリを動かしたまま運転していたドライバーが、59.50ユーロを請求された例もあります。ボーデン湖周辺も、こうしたことが起きる地域のひとつです。
スイス国境の近くでは、次の3つを習慣にすると安心です。
知られた例外がひとつあります。フランス領内にありながらスイス側の区域も持つユーロエアポート・バーゼル=ミュールーズでは、Swisscomが2016年に基地局を停止したため、空港内ではフランスの回線につながるはずです。
スイスが対象に含まれる旅行用eSIMなら、こうした悩みそのものを避けられます。自宅のWi-Fiでインストールしておけば、到着時にスイスの提携回線につながり、選んだデータ量の料金を一度払うだけ。1日パスも、メガバイト単位の思わぬ請求もありません。自国のSIMはスマホに入れたまま、データローミングをオフにして通話とSMSに使えます。周辺国にも足を延ばすなら、旅全体をカバーする周遊プランが便利です。1枚のeSIMで複数の国をめぐる方法はユーロトリップガイドで解説しています。
山がちな地形のわりに、スイスのモバイル通信のカバー率は非常に優秀です。2025年末時点で4Gは人口のほぼ全体をカバーしており、SwisscomとSunriseはいずれも5Gの人口カバー率を約99%と発表しています。ただ、人が住む場所のカバー率がほぼ100%だからといって、すべての谷や峠で電波が入るわけではありません。
電波が途切れるのは、だいたい予想どおりの場所です。長いトンネル、人里離れた高い峠、脇谷の奥。観光列車では、グレッシャー・エクスプレスに車内Wi-Fiがあるものの、アルプスでは区間によって電波状況が変わると案内されています。SBBの長距離列車の多くには携帯電波の増幅装置や電波を通す窓が備わっているので、都市間路線での電波はおおむね良好です。
SwisscomとSunriseは3Gを停波済みで(Swisscomの完全停止は2026年4月7日)、Saltは今のところ3Gを運用しています。最近のスマホには影響ありませんが、VoLTE(4Gでの音声通話)に対応していない古い4Gスマホは、スイスの大半の回線で通常の通話ができなくなるおそれがあります。
それも可能で、料金も悪くありません。ただし手続きが必要です。スイスの法律ではすべてのSIMに本人確認が義務付けられているため、パスポートか国民IDカードで登録することになります。たとえばSunriseでは、身分証のアップロードと短い自撮り動画で確認を行います。
現地SIMが向いているのは、長期滞在の場合やスイスの電話番号が必要な場合です。1〜2週間の旅行なら、旅行用eSIMのほうが登録の手間が省け、自分の番号もそのまま使えます。迷ったらeSIM、現地SIM、ローミングの比較を参考にしてください。
スイスは列車と地図の国です。データを使うのは、時刻表やきっぷのためのSBB Mobileアプリ、ハイキングルートを確かめる地図、写真、それにときどきのビデオ通話。おおよその目安は次のとおりです。
| 旅のスタイル | 1週間のデータ量 |
|---|---|
| ライト:地図、メッセージ、鉄道アプリ、夜はWi-Fi | 2〜3GB |
| 標準:上記に加えて写真、SNS、ときどき通話 | 3〜5GB |
| ヘビー:さらに動画視聴やノートPCへのテザリング | 8GB以上 |
無料Wi-Fiも頼りになります。SBBは一度登録すれば約80の駅で無料Wi-Fiを使えるようにしており、一部の国際列車には車内Wi-Fiもあります。一方、SBBの長距離列車の無料サービスSBB FreeSurfは、参加しているスイスの通信会社(Swisscom、Sunrise、Saltなど数社)のSIMでしか使えないので、車内では自分のデータを使う前提で考えておきましょう。スイストラベルパスを買った場合、SBB Mobileアプリに表示されるのはログインした状態で購入したときだけです。そうでなければ、メールで届いたQRコードをオフラインでもすぐ出せるようにしておきましょう。
山へ向かうなら、先にオフラインマップをダウンロードしておきましょう。電波が切れる前に保存しておきたいものはオフライン準備チェックリストに、スイスアルプスを抜ける定番ルートはミュンヘンからミラノへの鉄道ガイドにまとめています。
使えません。スイスはEUにもEEAにも加盟していないため、EUの「ローム・ライク・アット・ホーム」ルールは適用されません。それでもスイスを含めている通信会社はありますが、1日単位の料金やメガバイト単位の料金がかかる会社も多いので、出発前にプランを確認してください。
使えます。リヒテンシュタインは欧州経済領域(EEA)の一員なので、通貨がスイスフランでスイスと国境を接していても、EUのローミングルールが適用されます。
ありえます。スイスの基地局の電波はボーデン湖周辺など隣接地域まで届くため、国境を越えなくてもスイスの回線に切り替わることがあります。プランにスイスが含まれていないなら、ネットワークを手動で選び、自国のSIMのデータローミングをオフにしてください。
地図、SBBアプリ、メッセージ、写真を使う一般的な1週間なら3〜5GBが目安です。夜はホテルのWi-Fiを使うなら2〜3GBで足り、動画を観るなら8GB以上を見込んでください。
必要です。スイスのSIMはすべて身分証での登録が義務付けられているため、パスポートか国民IDカードが要ります。出発前に旅行用eSIMを買っておけば、この手続きは不要です。
おおむねつながります。長距離列車の多くには電波の増幅装置や電波を通す窓があり、幹線のカバーも良好です。ただし長いトンネルや山奥の区間では途切れることがあるので、必要なものは事前にダウンロードしておきましょう。
警察は117、消防は118、救急は144で、112もつながります。山岳救助や空からの救助はRega(1414)へ。ヴァレー州では144です。